プロローグ

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 都内の警察署内にある霊安室に連れてこられた。真っ白い布の下は膨らんでいて、死体があることを意味していた。  ゆっくりと。ゆっくりと男は布を捲っていく。  現れたのは、本当に妻なのかわからないくらいぐちゃぐちゃな物体だった。辛うじて判ったのは、愛する顔のみ。真ん中の方を見ると、男がプレゼントした結婚指輪が無残にも血で汚れていた。  その場にへたり込む。    どうして、逝ってしまったのか。置いていったのか。  愛する人を想いながら、男は泣いた。  そして、決心した。  妻の代わりに生きようと。  妻はいつも言っていた。『わたしが死んでも、ずっと恋をしてね』と。  そんなことできるはずがない。  妻以外に愛せる人間なんていない一一そう言おうとしたも、その時はそれを言わなかった。  触ってもいいか許可を得てから、妻の指に嵌められた指輪をゆっくりと取る。指輪を触った右手の親指と人差し指が血で汚れた。  次に、妻の首元にあるチェーンを取ろうとする。  中々取れないでいると、警察官が代わりに取ってくれた。  礼を言ってから受け取り、持っていたハンカチで血を拭う。ハンカチには、血がべったりとついた。
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