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「間違うた、間違うた」
傍らで、膝を抱いて蹲っていた男子が囃すように言った。
違う。おれは間違ってなんかいない、おれはわざと娘を殺したのだ。
「出られん。もう山から出られん」
白っぽけた喉をさらし、男子はびらびらと笑った。気の違ったような、全身の毛が逆立つような、耳障りな笑い方だった。
不意に火箸をあてられたような痛みを感じ、腕を見た。
おれの親指ほどもある蛭が二匹、ぞろりぞろりと二の腕を這いずっている。
おれは仰天した。
二匹の蛭は腕の切断面まで這い降りると、ぐずぐずに崩れた肉に、真っ黒な頭を埋めた。
「父さまと母さまがおぬしを食ろうておる」
おれは蛭をつまもうとしたのだが、出来なかった。指は緑色に変色し、ぶくぶくと膨れ上がっていたのである。
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