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肱から先はかつて仲間だった奴に取られた。遁走直前に鉈でぶつ切りにされたのだ。奴を恨んではいないがこの痛みは煩わしかった。
歯を食いしばって堪えていると、頭が痺れをともない、急速に目の前が白く染まった。
耳鳴りがする。
かたく目を瞑り、耳鳴りに意識を凝らした。ゆっくりと息を止める。気を失いそうになる兆候をこらえるのは好きだった。
ここちよい痺れが遠のくのを待ち、おれは深く息を吐いて、立ち上がった。
視界は霞がかかったように朧だった。
何度かまばたきし、あたりを見回すと、木々に埋もれるようにひっそりと建つ家屋を見つけた。
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