ひだまりのような毎日に

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 それを感じたのは、昼休みになるちょっと前くらいだった。 「なんか、頭痛いかも……」  頭痛くらいならたまにあるし、まぁ大したことではないと思うんだけど、それにしてもなんだかおかしい。なんなら、ちょっと頭もフラフラしている。ちょっとだけ早引けして帰ろうかな……とも思ったけど、そんなのがこの仕事場で通用するわけがない。  客商売なんだから、風邪とか伝染(うつ)しちゃったらよくないんじゃないかとも思うけど、たぶんそれを口にすると「じゃあ辞める?」と言われてしまうのが目に見えている。今の私が安定して収入を得るには今の仕事場を辞めたくはないし……。  だから、ちょっとだけ。  ほんのちょっとだけ、無理をした。  そのせいで心も身体もしんどい状況に追い込まれて、もうどこかへ逃げ出したくなる状況。いろんなことを言われて、いろんなことをして。されて。  だから、もうどうしようもない状態だった。 「ただいま~」 「お姉さん、おかえり!」  しおりちゃんの嬉しそうな声も、ちょっとだけ頭にズキズキと響いてくる。更にそんなときに飛び込んできた言葉が。 「おつかれさま! あのね、お姉さんいつもつかれてるから、今日ね、ラーメンつくったの! おゆとかいれたばっかりだから、まだあったかいよ?」  嬉しそうな、ちょっと誇らしげなしおりちゃんの顔。  きっと私が褒めてくれるって、喜んでくれるって確信したような顔。 「お湯、使ったの?」  でも私には、それに答えられる余裕がなかった。だって、え、嘘でしょ?  そんな私の雰囲気を察したのだろう、すぐに笑顔を曇らせて「う、うん」と返事をしてくれたしおりちゃん。でも、そういうことじゃないでしょ? 「お湯なんて使ったら危ないでしょ!? それに、ガスの元栓も開けたってことだよね、なんでそんなことしたの? 危ないじゃない、そんなことしたら! お湯なんて使ったら火傷したりっ、脚とか顔にかかったらどうするの!?」 「…………っ、」 「ねぇ、どうするのって訊いてるの! あぁ、もう!」 「ひぅっ!?」  しおりちゃんは、まだ小さいんだから。  火の扱いなんてさせられない。万が一火がどこかに燃え移って、火事でも起きたらどうするの? しおりちゃんひとりじゃ逃げられないでしょ……!? 「ごめんなさい……」  背中に投げかけられたしおりちゃんの声は、震えていた。
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