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「ただいまぁー」
「あっ、お姉さんおかえり」
すっかり街路灯が不可欠になってきた夕方過ぎ、仕事から帰った私を迎えてくれるしおりちゃんの顔は、今日はいつも通りだ。ううん、いつもと言っても、最近のいつも通り。
ビクビクしてて、遠慮してて、この間まで開いてくれていた心をまた閉ざしてしまったように見えるその姿は痛々しくも見えたし、何より見ていて苛立たずにいられなかった。
「……、ねぇ、お姉さん」
「ん、」
「今日もする、よね?」
「……うん」
下がった眉毛は、もう今まで通りの感情があまり残っていないことを表しているようだった。私はこんなにしおりちゃんのことを思っているのに。
撫でてくれる手の力加減も、なんだか遠慮がちで気持ちよくない。
「しおりちゃん」
「え?」
「今日は、どんなことしてお留守番してたの?」
「えっとね、えっと……」
そう訊かれるとは思わなかったと言いたげな反応が、また私の心をざわつかせて、うるさくなる。
「もしかして、言えないようなことしてた?」
「――――、ちがうよ!? お姉さんにないしょのことなんてないよ!?」
必死な態度が疑わしい。
けど、ここでそんなことを言ってしまったら、きっとしおりちゃんはここでも居場所をなくしてしまう。そういうわけにはいかない。
だって、しおりちゃんは私なしじゃ生きられないんだから。
……あれ?
何かがふと頭をよぎって、胸を締め付けたような気がした。でも、それって気のせいだよね? だって私たちは、こんなに幸せに暮らしているんだから。
あとは、しおりちゃんがもっと協力してくれたら、ね。
つい、しおりちゃんの頭を洗う指に力が籠るのを感じながら、私は今の幸せを噛み締めた。
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