ひとつの花

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その場にいるものが皆口をつぐんで、ただ端末の画面に映し出された緑色のバーが 少しずつ少しずつ満ちて行くのを見つめていた。 何日ものアップデートの末のインストール。 満ちてくる緑のバーと共にパーセンテージがくるくると、 100に向かってカウントされてゆく。 ベッドに寝かされているのは、今時珍しい ずんぐりむっくりとした手足の短いロボットだ。 アレックス型簡易家事ロボット。 今はもう、最後の一体だ。 若い母親が、ロボットに目を向けたまま夫の手を探った。 夫はその手をぎゅうっと握って、妻を引き寄せた。 黒髪の4歳くらいの少年が、母の服にしがみつき大きな瞳で両親を見上げている。 しかし父親の目は、やはりそのロボットと繋がっている端末の画面を凝視していた。 研究員のビートは、落ち着かなげに計器をのぞき込んでは そわそわとロボットの顔と端末の画面を見比べていた。 周りの数十名の研究者たちは、もうすでに何もすることはなく、 インストールの終わるのをただ待ち続けていた。 壊れ切ったアレックスを持ち帰り、反応をみて動作不良を修理したのはビートだ。 これが成功するかどうかは、未知数であった。
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