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高校の頃から、気づいたらいつも目で追っていた。その思いは大学になって更に強まった。
今もこうして、クレイグの唯一親しい女性でもあり、図書館司書の補佐を始めた"シェリル"の存在に嫉妬している。
「……そう。ならもう少しここにいたい」
「気が済むまでどうぞ」
そういって優しく笑いかけてくれるクレイグの表情を見た。
どうしてこうも、この男は自分に優しくするのだろう。いつもピアーズの小さなわがままを満たしてくれる。
だが自分は何も言わない。いつもみんなの世話役で、なんでも許してあげるのがこの男の務めだった。時折見える彼の苦悩の存在は、いまだに明るみに出ない。ピアーズは時折、それをジレンマに感じる。
横目で、こっそりクレイグの様子をうかがう。クレイグは目を閉じて、静かにこの空気と瞼を照らす夕日の色を楽しんでいるようだ。ピアーズの胸が締まる。
クレイグは最初に出会った頃から勤勉で、一緒に勉強をしようというと必ず時間を空けてくれる。今日もそれを口実に、図書館で集まる予定だったのだ。
勿論ピアーズが勉学に励む要素はほかにいくつもあったけれど、クレイグと過ごす時間を勉学の糧にしているといって神の叱りを受けようとも、一向にかまわないくらいだった。
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