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「……なあ、今日は泊まってけよ」
「……」
なぜクレイグがそんな事を言うのか、分からなかった。このまま、続きをしようとでもいうのか? それともただ人恋しいだけか? 何かをするのかしないのか、何も結論も出ていないのに。
「……分かったよ」
惚れた弱みを握られているのはピアーズの方だ。もちろんクレイグはピアーズのことなんて知らない。それでも、ピアーズは一緒にいたいと思ってしまう、弱みを無意識のうちにクレイグに利用されているような気分だった。それをクレイグが分かってやっていたほうが、まだマシな気もする。
ピアーズは、なんとなく気だるくて立ち上がることが出来なかった。クレイグの部屋のアナログ時計は22:08を指している。明日は祝日だから、このまま親に泊まると伝えたあと寝てしまってもいい。ピアーズは携帯のアドレス帳から母親を呼び出してメールを飛ばした。
それでも、メールを送り終えるとどうしようもなくやりきれない思いが再びピアーズの中に湧き出てくる。
「……オレにキスするのが、願いだったのかよ」
「……かもな」「……願いを聞くって言ったのは、オレの方だ。それでお前の気が済むならいいよ」
「……」
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