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#005 09.03.01 - Piers side -
『もしもしピアーズ?今日、行く?』
「行くよ。4時限目終わったら行く」
3時限と4時限の間に、クレイグからかかってきた電話を取った。今夜は一緒にジムに行くのを予定していたから、その話だろう。
『なら先行ってて。俺4限目終わってから教授の手伝いしなきゃなんなくなって』
「わかった」
『じゃあまた後でな』
「ん」
それだけ言って通話を切る。
いつも一緒に行くジムだが、その中で特に会話らしいものはない。クレイグはあまりプールにはいかないし、2人で並んでランニングマシンには乗るけれど、ただひたすら走るのに徹する。それぞれが自分のストイックを突き詰めるあの空気感が、たまらなく好きなのだ。
ピアーズは大学から街に続く坂道を下った。もうすっかり日が落ちてしまって空は完全に夜に塗られるのを待っている。
街の灯りがほの明るく夜の闇に怯えるかのように少しずつ広がり始めていた。
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