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「あと丸々二週間か。そりゃOKを出す訳にはいかねえな」
「単位落とせっていうのかよ」
「俺がお前んちまで行って、子守唄歌ってやるよ」
「いらない」
「遠慮すんな」
「してないよ」
こういう他愛もない会話が心地いい。ピアーズは言いながら幸せな笑いがこみ上げてさらに深くマフラーに顔を埋めた。
「お前、笑ってんな? 親友が本気で心配してんのに」
「笑ってない笑ってない」
「今度模型作るの手伝ってやるから」
「マジ?」
「ああ。だから頼むから寝てくれ、今日くらい。いいな?」
クレイグはそういって立ち止まる。このT字路から先は、クレイグが左、ピアーズが右へと帰る。
「分かったよ」
「じゃ、おやすみ」
手をあげて別れの挨拶をするクレイグに、ピアーズは小さく笑う。
「気が早いな」
「いいから」
「ん。おやすみ」
ピアーズは先に踵を返した。今度また家に来る口実ができたことと、心配してくれたことを振り返るだけで、今日もまた寝不足になりそうだと思ってしまう。
後ろを振り返ってその背中を見送りたい衝動に駆られながらも、ピアーズはまっすぐ先を見つめながら歩いた。
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