愛と罰

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彼と出会ったのは大学のキャンパスでした。たまたま行った講座に彼も参加していて……あ、こんなところから話してたらダメですね。ごめんなさい。誰にも話してなかったから、話すの下手で。 彼と付き合ってたんです。1年ともうちょっと。付き合ってるうちに、もっと私のことを見て欲しくなって。私はあの人のもっと側に行きたかったけれど、彼には何にも代えられない宝物があったんです。その宝物が邪魔で、私は彼の隣に行けなかった。 私の全ては彼に捧げているのに、彼はその全てを私にくれないだなんて理不尽じゃないですか。 だから、ずっと疎ましく思ってたんです。彼は私を一番に愛していない。こんなにも欲しているのに彼は私のものにならない。彼にご飯を作って、彼の好きな映画を観て、彼の好きな音楽を聴いて、彼の1日を私の1日にして。彼の半分は私で出来てたはずなんです。だってご飯を作っているのは私だもの。彼を作ってるのは私なんです。 私の全部は彼への愛と彼で出来ていた。 それなのに彼にはあの宝物があった。私は彼の全てではない。彼にとっては、あの宝物が一番だった。 そんなの、許せないじゃないですか。不当です。 あれを隠すのも壊すのも簡単でした。でも、私がそれをやったことがバレてはいけない。だって怒られたくないですから。叱られたり、恨まれたりしたら彼は私から遠のいてしまう。それは私の望みじゃない。私は彼の近くにいないといけないんです。誰よりも側に。そうして彼に一生添い遂げなければならないんです。 でも、あの宝物に何かがあった時点で疑いの矛先は必ず私に向くんです。彼の家には私と彼以外、誰も入らなかったから。それに、彼はあのCDをずっと大切にしていたし。
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