替えられないもの

誕生日に買ってもらったおもちゃ、買う前はとても心待ちにしていたのに、しばらくすると飽きてしまう。
これも、ちょっと壊れてしまったから捨ててしまおう。そうして新しい物を買えば良い。
あんなにかわいがっていた飼い猫が死んでしまった。その時は悲しいけれど、また新たに猫を飼い始めるとそんな事はすっかり忘れてしまう。
タダシは、そんな子供だった。

「ねぇ、ママ、新しい算数のノートと鉛筆買ってよ」
タダシは学校の宿題をやりながら言った。母親は夕飯を作る手を止めると、タダシが宿題をやっているのを覗き込んだ。