初めての採集

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 魔法を使うための第一歩、魔法陣の巻物を作ろう!  というわけで、裏山に来ました……当然、内緒です。  うん、わかってる。ばれたらこっぴどく叱られます。  でも、我慢できなかった。  だって、魔法だよ。魔法を使えるか否かの瀬戸際なんだよ。異世界といえば魔法でしょう。  まあ…、ぶっちゃけ使えると便利だからね魔法。  一応、昨日ひととおりの説明は受けた。  もちろんクリフは、まさか僕が一人で勝手に裏山に繰り出すとは思ってもないだろうけれど。先日、リュシアンが素材の入手に頭を悩ませていると、クリフは助け舟を出すように言った。 「素材の錬金加工がご自分でできるのでしたら、ここの薬草園の裏山ですべて揃うことは揃いますが」 「……え!?」    はじかれたように顔を上げたリュシアンに、クリフは事もなげに続けた。 「このお屋敷は、山のふもとに立ってますからね、薬草園の為に拓いた場所から後ろは、ぜんぶ森ですよ」  しかも私有地なので、基本的には冒険者も立ち入らない。まさに素材の宝庫らしいのだ。この辺のモンスターレベルはせいぜいDクラスなので、アナスタジアもたまに冒険者を雇って素材を揃えたりしているという。  なにそれ、僕もいきたい。混ぜてくれないかな、その素材収集。  なかば本気で思ったが、まあ無理なのはわかってる。 「ホワイトツリーは、特徴的な白い表皮の木です。あと、そのワックスに必要な油は、オークモドキというオークより小さなモンスターの背脂を加工したものですね」    なるほど、なるほど。 「ぼっちゃん?もし必要なら、奥様に…」  頷きながら考えに没頭し始めたリュシアンに、クリフは幾分気がかりそうに声をかける。 「え?…うん、そうするよ。今日はありがとう、仕事の邪魔してごめんね。また必要な物があったら声かけるからよろしくね」  そう言って、昨日は薬草園を後にした。  ちょっと心配かけちゃったかな。でもごめんね、行くと決めたんだ。  無属性の魔力操作を覚えたおかげで、身体強化はその辺の冒険者なみの防御力はあるらしいので、ある程度は自分の身を守れる。もちろん、へっぽこな自覚はあるので無茶はしない。無理そうなら早々に引き上げるつもりだ。
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