詠唱VS魔法陣

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 いやいやいや、記憶力がいいとかそういう問題じゃないぞ。  試しに書き写してみようかと思ったが、それはできなかった。写生のスキルってわけじゃなさそうだ。なんだろう、念写?  そんなスキルあるの?  でも、すぐに消えちゃうしなあ。  もしかして触れられれば魔法が発動するのではないのだろうか?  あの時のように。  不用意に触れて、魔力検査の紙を燃やした…、あの時。  魔法陣の巻物の発動条件は触れること。魔力が魔法陣をくぐることで、魔法が発動するのだ。  ちなみに蛇足ではあるが、対象の魔法を発動するだけの魔力がなければ不発に終わるし、使い捨てなので魔法陣も消えてしまう。高価な上位魔法の巻物も一瞬で紙くずになってしまうリスクがある。  そもそも触れれば発動、というのもある意味危険だ。そういう扱いの面倒さ、リスキーさみたいなものも魔法陣が広く出回らなった要因の一つかもしれない。  リュシアンは、本に描かれた魔法陣を指でなぞった。  もちろんインクで書かれたそれが反応することはないが、もしかしたら「魔力」を使ったものなら…、「念写」で描いた魔法陣なら魔法は発動するかもしれない。  リュシアンは、自分の思いつきに興奮を隠しきれなかった。  インクに混ぜる錬金術で作った魔水は魔力の代わりなのだ、可能性はある。  けれど、当然ながら簡単にはいかなかった。  先ほどから何度やっても魔法陣は完成しないのだ。まるで揺れる水面に描いたように、すぐにゆらりと歪んでしまう。 「あー…疲れた」  視えないけど、たぶんMP相当減ってるよ。  リュシアンは脱力したように机につっぷした。くしゃり、と白紙の紙が腕の下で音を立てる。  メモを取るために用意していた白紙の紙。 「あ…!」  最初に空中に出現したから、失念していた。  もとはといえば、魔法陣は紙に書かれているではないか。  それに念写といえば、写真だよね。  デジカメになってからというものあまり聞かないが、昔はよく霊とか超能力だとかでそんなの聞いた気がする…、たぶん。  やってみる価値は、あるかも。
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