模索

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 温室を抜けて作業場への道を、リュシアンは思案気に足元を見ながら歩いていた。  問題はとりあえず山積みだけど、これはかなり希望が持てるかもしれない。  使えないと思っていた魔法が使える。  魔法陣を調べるのは骨が折れそうだけど、そのうち王都や学園都市にいけるようになればもっといろいろな魔法陣を探せるかもしれないし、おそらく見ればどんな魔法陣でも描けるだろう。  本人は気が付いていないが、実のところとんでもないことである。  リュシアンは写生の上位互換くらいに思っているが、念写と呼んでいるその能力は全く別物である。  巻物に陣を移すには写生のスキルを持ってしても数分から、数枚の魔法陣が必要となる大掛かりものだと数時間はかかる。また写生という言葉通り、実際の魔法陣を見ながらしか書けない。それをリュシアンはほとんど一瞬で、しかも一度見れば記憶してしまうのでそらで描けるのだ。  だからこそ、まがりなりにも空中に判を押すように描ける。今はまだ流れてしまって魔力を通すまで形を保てないわけだけど。  おそらくスキルというよりこれは異能であり一般的ではない。でなければ、属性も関係なく無詠唱で魔法が発動できる魔法陣はもっと研究されただろう。 「おや、ぼっちゃん」  考え事をしながら歩いていたリュシアンは、いきなり呼びかけられて顔を上げた。  
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