謎の少年

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 モンスターランクD、なんとオークモドキよりかなり上だ。  というか、この森では厄介な類のモンスターだ。集団で行動する上に、さらに仲間を呼ぶ。今のリュシアンにはとても倒すことはできない。  これは、逃げることを考えないといけないエンカウントだ。  ただ普通に逃げれば、もちろん回り込まれる。だったら……  リュシアンはカバンの中を、地面にぶちまけた。せっかく収集した素材になりそうな葉っぱや、木の実、植物の蔓などが無造作に放り出されたが、今は悠長にカバンの中身を探っている暇はない。 「…っ!あった」  少年の方を見ると、すでに数匹のタイガービーに囲まれていた。しかもなぜか激怒状態。いったい何やらかしたんだ、少年!?  小さな布の巾着袋、それは万一にもオークモドキが集団でいた場合に撒いて逃げるために用意していたもの。  リュシアンは大きく振りかぶって(野球なんかやったことないけどなんかそんな感じで)正面のタイガービーに向かって思いっきり投げた。  ビーの胴体に当たったそれは、衝撃でほどけて中の粉を一気にぶちまけた。  謎の粉攻撃を食らったモンスターは、とっさに距離をとった数匹が逃げていき、至近距離だった個体は次々に地面に落ちた。 「必殺、痺れ薬」  いや、ほんの数分痺れてマヒしてるだけなんだけどね。しかも本来の使い道とは異なる。これはマヒを緩和する治療薬を作るための植物を、粉末状にしたものだ。  毒と薬は表裏一体ってね。  本当にピンチになったら試しに使おうと思って持ってきてよかったよ。  手拭いでマスクしたリュシアンは、急いで少年のもとへ走っていった。  もちろん、少年も痺れている。  だよね、うん、わかってた。  でも早くここから逃げないと、もう動けそうなビーがモゾモゾしている。 「まだ動けないよね、でもごめん。できるだけ僕に掴まって」  リュシアンは少年の身体を持ちあげるように肩を貸した。身体強化はこんなところでも地味に役立つ。一回り以上大きな少年を、軽々とはいかないが曲がりなりにも担げるのだから。  ……あれ、この子?
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