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これは対価である。
黙々とオークモドキを解体している少年を、じっと見つめながら己を納得させるようにリュシアンは頷いた。
なんでも自分でやらないと、と決意した矢先、こうしてピエールに解体を任せているあたり情けないが、人間すぐにどうにかなるものでもない。
うう、だってまだ殺生は厳しい……
本当はオークモドキを運ぶのを手伝ってもらおうと思っていたのだが、意外なことにピエールは解体作業ができると言った。しかもビーから助けてくれたお礼に、解体してくれるというのだ。
奴隷になる前から冒険者ギルドの下働きとして、こうして解体などの作業で小銭を稼いだりしていたらしい。
えらいね、勤労少年。
だからこそ、少し心配になる。
彼が足をつっこんでいるだろう、今の危うい現状に。
むろん好きでやっているわけではないのかもしれない。奴隷なら主人の意向なら逆らえないだろうし。
まあ、余計なお世話なんだろうけど、見るからにお人よしそうな彼に対して老婆心というやつだ。
「終わりました、これですよね、背脂」
「手際がいいね。ありがとう、ピエール助かったよ」
お礼を言うとすごく驚いた顔して、激しく首を振ってうつむいた。めっちゃ照れてる。たぶん、正当に評価されたことがないんだろうな。
この辺の心理は、実のところよくわかる。前世で同じような思いをしたことあるからね。ピエール少年に肩入れしてしまいそうになるのはそのせいなのかもしれない。
受け取った背脂を、持ってきた紙で三重くらいにくるんでリュックのポケットにしまう。
あっ、そういえばカバンの中身拾っていかないと。盛大にぶちまけたあれこれと一緒に、せっかく作った薬とかも放り投げた気がする。瓶、大丈夫かな。
「あ、あの…」
「ん?」
ほとんど空になっている肩掛けカバンを覗いていたリュシアンに、もごもご口を動かしていたピエールが意を決して話しかけてきた。
「このオークモドキの肉…、どうするんですか?」
「……肉?あ、そうか、うーん、そうだね」
思いがけない角度からの質問に、リュシアンは一瞬なんのことかと思った。そりゃそうか、背脂だけ取ってあとは知らないじゃ、オークモドキもかわいそうだもんね。
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