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でも、カバンの中身は今から拾いにいく荷物でパンパンになっちゃうし。リュックは背脂とツリーの皮でいっぱいだし。
オークを捌いたナイフを拭いていた少年は、そんなリュシアンにぐるんっと身体を向けた。
「あ、あのっ、ずうずうしいお願いですが、貰ってもいいですか?」
「えっ、ホントに?いいよ、てか、ありがとう。このオークモドキも報われるよ」
渡りに船のその言葉に、リュシアンは助かったとばかりに頷いた。
勢い余って前のめりになっていたピエールは、自分で聞いておいて思わずぽかんと口を開けた。
肉を包むのに丁度よさそうな大きな葉をピエールに渡すと、リュシアンは荷物を拾ってくると言ってさっさとタイガービーに襲われた場所へ歩いて行った。
残されたピエールが、戸惑いにも似た複雑そうな表情でそれを見送っていたことはもちろん知る由もない。
「よかった、瓶、割れてないや」
獣道の脇、草むらの境目あたりに転がっている小さな瓶を慎重な手つきで拾った。蓋もしっかり閉まっているので中身もこぼれてない。
あたり一面に散らばっている素材たちは、踏み荒らされていたので良さそうなものだけ拾い集めていく。
「それは…、まさか薬?」
肉を包み終わって、ピエールがいつのまにか荷物拾いを手伝っていた。
「ん?そうだよ、でも僕が作ったやつだから、正規のものじゃないけどね。これは回復薬。傷薬もあるよ」
「……回復、薬」
透明な青い液体の入った瓶を、穴が開くくらいじっと見つめている。
興味があるのかな?いや、違うか……
「これが欲しいの?」
「あっ、はい!…い、いえっ」
どっちつかずの返事にリュシアンは苦笑した。おそらくとっさに飛び出した最初の言葉が本音かな。
「回復薬は徐々に体力を回復するんだ、一般の傷薬とちがって傷は治らないけどね」
付け加えるように説明して、その瓶を少年の手のひらに乗せる。とっさにピエールはギュッと掴んでしまい、すぐに思い直したように慌ててリュシアンに押し返した。
「解体のお礼だよ。すごく助かったから」
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