決着?

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 とりあえず一息ついたリュシアンは、座り込んだままのピエールに向き直った。 「ちゃんと話を聞かせてもらうからね」 「ごめん、わかってる俺は…」  すでに観念している少年は、どこか憑き物が落ちたように少し笑ったように見えた。  しかし一瞬後、リュシアンを見ていたその瞳が、驚愕に見開いた。  え、後ろ…?振り向こうとするリュシアンを、ピエールはすごい勢いで身体ごと抱き込むようにして地面に押し付けた。一瞬のうちに視界は塞がれ、背中が地面に当たった。 「…っ!?いった…なに、どうしたの」  ぽたり、と顔に何か落ちてくる。腕は動かなかったが、覆いかぶさっている身体が身じろいだのでそれが何かわかった。赤い液体、それがボタボタと上から落ちてきた。 「な、ちょっ…ピエール!離してっ」  それが血だとわかって、リュシアンは少年の身体の下で暴れたが、完全に押さえ込まれているので身動きがとれない。いくら力が強化されてても、こうもすっぽりと抱き込まれると簡単に抜け出せないのだ。  そこへ新たな声がかぶさった。 「そこをどけ、ピエールっ!奴隷風情がなに命令に背いてるんだ、このままじゃ俺たちまで始末される!せめてそのガキの首を持って行けば…」  どうやら今回の事件を起こした男の一人のようだ。仲間たちがグリズリーの餌食になっているときに、自分だけどこかに身を潜めていたのだろう。ほとんど目立った怪我もなく、その手には血に濡れた長いサーベルを持っていた。虎視眈々とチャンスを狙って、リュシアンを亡き者にしようとしたのだ。 「誰の首だって?」  男はギョッとなって振り向いた。そこにはこの敷地の主、エヴァリストが悠然と立っていた。  戦闘が優勢に転じて、残りは騎士たちに任せてきたようだ。  戦闘の専門家でなくとも、彼もれっきとした魔術師である。曲がりなりにもグリズリーを足止めしていたエヴァリストと、こそこそ陰で隠れていたチンピラとでは勝負は決まっている。  どうやらフォレストグリズリーも騎士たちによって倒され、この突然の騒動もようやく終わりの時が見えてきたようだった。 「ピエール!…こ、これは…、早く母様のところへ」
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