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「……そこでだ、君にはこの屋敷で十六まで働いてもらう」
その言葉にピエールは弾かれように顔を上げる。
「もちろん遊ばせておく労力はないからね、キリキリ働いてもらうよ。その時に考えが変わってなければ、私も今度は止めはしない。好きにすればいい」
唖然としてぱくぱく口を動かしたあと、何か言おうとするピエールを遮るようにエヴァリストは畳みかけるように付け加えた。
「リディも同じだ。学校に行くまでは、奴隷としてここで働いてもらう。就学可能な七才になったとき、どうするかはあくまで本人の意思に任せる」
無茶なことを言っている自覚はあったのだろう、ピエールは結局この提案を受け入れた。少なくとも妹と一緒にいられるし、エヴァリストは学校の件も完全には否定しなかった。
ピエールは、改めて屋敷の主人であるエヴァリストへ頭を下げた。
「どうか…、よろしくお願いします」
めちゃくちゃな言い分も真剣に聞いてくれて、こうして真面目に受け答えしてくれた。特別扱いはしないといいながらも、結局は屋敷に引き取って将来のことまで腐心してくれている。
ほとんど投げやりで鉱山へ行って、それで罪の意識から逃げようとしていた自分が恥ずかしくなる。
せめて精一杯働いて、ここの人達への罪滅ぼしと、恩返しをしていこうと心に決めたのだった。
「丸く収まって安心しました。それでは、僕もこれで…」
ピエール達は、自分たちが配属される薬草園の責任者クリフに連れられて部屋を出て行った。さすがの父の采配に満足しつつ、リュシアンはそそくさと部屋を出ようと回れ右をした。
「待ちなさい、リュク。少し話そう…」
ですよねー…
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