3366人が本棚に入れています
本棚に追加
リュシアンの出生が王家に関係していることを。
まだ確信が持てないのも確かだが、本当はまだ信じたくなかったのかもしれない。
この人たちの息子ではないと、はっきり断言されることが。
ともかく、ただ腐っていた今までとは違う。
自分を守ってくれている両親の為にも、そして巻き込まれてしまうかもしれない兄妹の為にも。
もはや自分のことだけではないのだ。
リュシアンにとって、果てしなくどうでもいいことに正直なところ巻き込まないでもらいたいが、たぶんそっとはしておいてくれないのだろう。
それなら力をつけるしかない。
対抗する力を。
最終的には国を出てもいいとさえ思っている。
家族を守るためにはそれが一番いいのかもしれない。
もちろん逃げるみたいで恰好がいいとはいえないが、どうしても放っておいてくれないのならもう仕方がないではないか。そのためにも力をつけて、一人で生きていけるようにしなくてはいけないのだ。
それに、本意ではないが戦わなくてはならないとなったら、泣き寝入りだけはしたくはない。
誰かの損得の為に、なぜ自分が不利益を被らねばならないのか。
これ以上何もしてこないというのなら今までのことは水に流してもいいが、おそらくそうはならないだろう。
これから忙しくなりそうだ。
自分の生死がかかっているというのに、リュシアンはどこか楽しげだった。
ブラック企業のサラリーマンなめるなよ。
年中無休、昼も夜もぶっ通しで働ける自信があるぜ。
まあ…、たぶんそれで過労死したんだけども。
でもこれは自分の為だ。
やりがいありまくりだろう。
せっかく異世界にまで来たんだし、楽しむための努力ってやつだ。
やってやる。
前世は過労で死んだ挙句、異世界に転生してみれば、今度は常に命を狙われるいわくつきだったりと、まさに波乱万丈すぎる人生だが、ここまで来ればもう楽しむしかないだろうとさえ思った。
最初のコメントを投稿しよう!