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今日はいよいよ街でのお買い物。
昨日はわくわくして眠れなかったよ。遠足前の子供か、とも思うけど本当に子供だから仕方ない。脳が若返ってるのかな?
もともとあまり外出してなかったので、実のところ街を歩くのは初めてだ。行っても馬車から下りなかったからね。なんてもったいないことをしてたんだろう。
街に出るにあたって、目立たない服装をチョイスすることにした。
前世の感覚でいうと、白シャツに、ハーフパンツみたいな恰好だ。素材はいつもの絹っぽいものではなく、綿の洗いざらしのような感じのものだ。ところであの絹みたいなのは、やっぱり虫が吐いた糸なんだろうか?
「うー…ん」
自分でコーディネートしておきながら、リュシアンを前に立たせたピエールは納得いかないような顔をする。
「なんだよ、いいたいことがあれば、はっきり言ってよ」
「ぼっちゃんは、なに着ても……ぼっちゃんだな、というか」
ピエールは困惑したように首をひねった。
なんだろう、このブーツみたいな靴がだめなのかな?いや、それなら自分だって似たようなの履いてるし。同じような恰好なのに、どうしてこうも「ぼっちゃん」なのだろうか。
「ちょっと、なんでピエールまでぼっちゃんって呼んでるの?」
他ごとに気を取られていたピエールは、いきなりの指摘に「え?」と顔をあげた。
「呼び方ですか?クリフさんが、そう…」
やっぱりクリフかっ!
あの人の影響で、薬草園では皆にぼっちゃん呼びされていた。ピエールも当然だと思っているようで、直す気はなさそうだ。
ピエールはあの日以来、クリフをリスペクトしている節がある。
事件の日、ピエールは本来は屋敷に向かわせるはずのモンスターを、仲間であるゴロツキどもが潜む薬草園の端へと誘導した。そんなことをして、彼が殺されなかったのはひとえにクリフのおかげであった。
襲撃を失敗させたはよかったが、ゴロツキどもは薬草園の敷地内へと逃げてしまった。それを止めようとしたピエールに逆上して一斉に襲い掛かってきたのだ。そんな時、騒ぎに駆け付けたクリフが、クマに追われてたチンピラどもを追い返すために奮闘したらしい。すぐに騎士たちが駆けつけてきたが、どうやらピエールにとってはクリフがヒーローだったようである。
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