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でも、ぼっちゃんはやめて欲しかった。
こいうのはね、きっと大人になってもなかなか抜けないんだ。ずっと、ぼっちゃんとか呼ばれるんだ…、勘弁してよ。
とはいえ、キラキラした目でクリフを語る彼に何を言っても無理そうであった。
ちらりと、ピエールの横にいるリディを見た。
彼女はピエールの妹で、例の事件のあと兄と一緒に薬草園預かりとなった。まだまだ幼いながら、なかなか気が利いて働き者だと薬草園ではプチアイドル化しているようである。
大きな茶色の瞳がぱちぱちと瞬き、リュシアンを見上げてにこっと笑った。
「ぼっちゃま、よくおにあいです」
すこし舌足らずではあるが、愛嬌たっぷりに答えた。
そっかー…、君もなんだね。
朝一番の街は、活気にあふれていた。
リュシアンたちは、まだ早い時間に無事に街に着いた。屋敷はずっと離れた丘の上にあるため、ここまでは馬車での移動だったが、そのまま乗り込むことはせず、街の入り口にある馬車置き場に預けることにした。
やっぱり、ゆっくりとぶらぶら歩きたい。
行き先は防具屋と商業ギルド、そして冒険者ギルドだ。
ギルドは所属してないと割高ではあるが、信用のおけない露天商より品数も多いし、粗悪品を掴まされることもない。
ということで、とりあえずは防具屋から行くことにした。
腕のいいドワーフ族がやっている店があるというので、そこへ案内してもらうことになった。なんでも、まだピエールの両親が生きていた頃からの知り合いだという。
貰ったナイフを仕舞えるホルダー付きのベルト、きちんとした皮製の良いものが欲しかった。何しろナイフがナイフだ、変な物は買えない。ロランは結局、あのナイフの出どころを言わなかったが、あえて聞く必要がないほど明らさまな意匠がすべてを物語っていた。
少なくとも、投げちゃいけないヤツだ。
投擲用や普段使い用のナイフも併用して持っておかなくちゃ。あ、そうだ投擲するのはそれ専用の扱いやすいものを作ってもらったほうがいいね。リュシアンは、まだ鍛冶はできないのでそれも考えていく必要がある。
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