独白

3/16
前へ
/16ページ
次へ
 肌が私よりもずっと白いし、できものがひとつもなくて、ゆでたまご……というよりは無機質な陶器に近かったわ。肩上の少し長い黒髪がすごい艶っぽくて、でもそれがよく似合っていたのよ。まつげもすごい量が多いうえに長くて、重そうと思ったこともあったかしら。そのまつげのせいかは知らないけどいつも眠そうだったけどね。あと、瞳がすごく黒かったわ。漆黒っていう色が一番近いかしら。覗くとその世界が全部映りこむくらいの黒色だった。でも私、そんな彼の目がすごい好きだったのよ。  彼とは同学年だったんだけど、結構周りからは腫れ物みたいに扱われてたわ。滅多に喋らないし、顔の表情も変えなかったから。先生たちはそんな彼をある意味、問題児として扱ってたみたい。接しにくかったんだろうなぁ、と今になったら思う。私からしたらそうでもなかったんだけど。  私の中学校の図書室はね、びっくりするくらい利用者が少なくて、昼休みは私達のほかに五、六人いたけれど、放課後のほとんどは私と彼だけだったの。  そんな状況が続くものだから、私は自然に彼を意識するようになっていたわ。  初夏の日だったかしら。いつものように、私が図書室に行ってみたら、珍しく彼が起きててね。目が合ったの。果てのない暗闇がじっと、こちらを見つめていたわ。少ししたら、彼は興味なさげに外を眺め始めたのだけど、それだけでね、私の息が止まるかと思った。心臓なんて破れてしまうんじゃないか、っていうくらいにドンドンって叩くような音が鳴ってたわ。笑えちゃうわよね、一目惚れだったの。  それからすっかりだめだった。もう本を選んでるときなんて本当にまた彼と目が合ったらどうしようだなんて思ってた。次こそ死ぬかもしれない、とも思ってたわね。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加