独白

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 それから少し経った頃。そういえば、あの日も、雨の日だったわね。本当に彼との思い出は雨が多いわ。  その日もいつもと同じだった。放課後、図書室には私と彼の二人しかいなくて、彼は相変わらず何もせずに机に伏せて寝ていたわ。  そんな彼を意識しながら、私は比較的古い本が並ぶ本棚を見ていたわ。そしたら、見たことがない本が一冊あったの。真っ白い本。絵も写真もない、あるのはタイトルだけ。タイトルは『独白』。  私はね、何気なしにその本を手にとって表紙をめくったの。小説って出だしが面白くなければなかなかページをめくる手が進まないわよね。その頃になるとどんな本でも最後まで読んでしまうようにはなっていたんだけれど、最初の数行を読んでみる癖は残ってたのよね。そうしたら表紙と遊び紙の間に白い紙が一枚、挟まっていたの。深く考えずに私はその紙を手にとった。 『死にたい』  その紙には、そう書かれてたの。無機質なくらいに綺麗な文字で。驚いて、何もいえなかった。どうしよう、どうすればいいのかしら。私は、何をすればいいか分からなかった。     
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