独白

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 それから、私は彼とよく話すようになったわ。彼は、中学生とは思えないほど落ち着いてて大人伸びていたの。感情論はあまりなかったけど、だからといって論理的でもない。詩的で哲学的な言葉が多かった気がする。  彼自身が、本そのものだったのかもしれないわね。だから、私はなおさら彼のことが好きになっていった。だって、何もかもが綺麗なんだもの。  彼は、そんな私に多分気づいていたのだろうけど、だからといって咎すような真似は絶対しなかったし、拒むこともなかった。もしかしたら彼は、人と一緒にいるのが嫌いなわけでもなくて、ただうまく他人との接し方が分からないだけだったのかもしれないわね。  そういえば、意外だったのだけれど彼も読書家でね。文豪の作品が好きみたいで、そのことについて彼とよく話したわ。どの作家の作品は女々しいだとか、あの作品のストーリーは品にかけるだとか。そんなことを毎日話してたの。そうしてる間に、ずいぶん彼と仲良くなってね。よく一緒に帰り道を歩いたこともあったわ。  彼はいつも家に帰りたがらなかった。だから、いつもゆっくり川沿いを歩いてたの。家に何か事情があるということは私にも分かったわ。かといって、私も聞きだそうとは思わなかったわ。彼は彼なりの歩む速度があって、知り合いといえど赤の他人がそれに首をつっこんでいいわけないから。私は、彼がもし打ち明けてくれるのなら、それに答えようと思っていた。
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