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俺が見たものはいったい何だったのだろうか?
一瞬だったが、あれは人ならざぬ者だった。
俺に霊感などない筈なのだが、俺は幻影をみたのか?
俺の神経がいかれてしまったのか?
このままじゃ本当に気が狂いそうだったので、
専門家の元を訪ねる事にした。
祈り捧げる一族の末裔は、人外の事にも詳しいと聞いた気がする。
俺の名は、シミズルカス
日本人の父とドイツ人の母をもつハーフである。
母と同じ灰色がかった蒼い瞳と灰色の髪
シミズと名乗ると帰化したのかと必ず聞かれる。
面倒な時は否定もせずやり過ごしたりする。
知り合いがいる教会へと向かう。
真っ黒いローブを深々と被り、俯いて祈りを捧げる
顔が全く見えないが、いつもの事だから気にも留めず
俺は彼の祈りが一息着くのをじっと待った。
いつ来てもいいが、祈りを妨げないのが唯一の決まりだ。
「何か御用かね!」
祈りを終えたら教会の片隅で船漕いでいる奴に声をかける。
「ハッ!寝ていたのか?すまない」
俺はふらっと立ち上がって会釈する。
そして俺は彼に、このモヤモヤを吐き出す。
俺の神経がおかしいのか確かめる為に・・・・・。
でっかい崩壊した白い顔が浮かび上がり
俺に向かって何か呟いているが聞き取れない。
あれは一体何だか心当たりはないかと。
手がかりが少なすぎて何とも言えないが、
危害を加えてこないなら放っておけ
何か言っているならちゃんと聞く事だ。
それだけ言って、彼は再び祈りを捧げる。
知り合いといってもまともに会話した事がない。
彼は、いつも祈りを捧げ続けているからだ。
祈りの区切りの僅かな間のみ関われる。
いつ食事をしていつ寝ているのか?
不思議でならないが祈りが全てなのだ。
声を聴く事と言われても,いつまたでくわすか?
ただ神経の病ではなく、超常現象ぽいので安心した。
大切な祈りの合間にヒントをくれた事を感謝し、
彼の背中に一礼して、俺はその場を後にした。
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