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「何だよこれ、何だよ……」
どれもこれも頁は真っ赤、啓太はうろたえて本棚にもたれかかった。
「これは……何なんだよ」
散らばった拍子を見てカノコは悲しそうに呟いた。
「君の未来ですの。君の求める本はこの中にあるですの」
カノコの問いに啓太は首を振った。
確かに自分は死のうとした。でもこれは違う。
「じゃあ何を君は求めているですの。言ってくれなきゃカノコには分からないですの」
「違う!」
啓太は叫んで入り口に向かって走った。
「駄目です外に出ては」
館長の止める声が聞こえたが啓太は構わず館内を飛び出した。
頭によぎるのは本を開いた時に見た。自分の死んだ姿だ。挿絵の隣に書かれていた文章が頭の中を流れた。
『学校帰り廃ビルの屋上で――』
屋上から飛び降りようとした様子がありありとかかれていた。もし飛び降りていたら……。
心臓がばくばくと鳴っている。
足を止めて顔を上げた啓太は振り返った。もう図書館は見えない、ただ広い空間が続いているだけだ。何もない白い空間が――
「やだよ!どこなんだよここ!帰して、僕を帰して――」
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