何度も、何度も。

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「ごめんね、眠っちゃってたみたい」 彼女は僕の姿を目に映すや否や、そう言ってにこっと笑った。 「ううん、大丈夫だよ。もう起きて平気なの?」 僕は彼女の手を布団の中に戻しながら優しい声音で声をかけた。 「うん、さっき少し寝たからかな?今はすごく気分がいいんだ」 彼女は僕から少し視線を外した。 嘘だ。 彼女は嘘をつくとき、決まって視線を逸らす癖がある。 本当は気分なんていいハズないのに、彼女はこんなになってまで、僕に心配をかけまいと、平気なフリをする。 「そうか、それなら良かった。今日はね、特別天気がいいんだ。ほら見て、暖かい日差しが差し込んでいるのが分かるだろう」 僕はそんな彼女を見ていて泣きそうになってしまう自分を抑えながら、首を動かした。 そうする事で、瞳に溜まった涙を彼女に見せないように。 「うん、ここからでも分かるよ。とっても、あったかい……」 そういうと、彼女は目を閉じた。 暫くすると、規則正しい寝息が聞こえてくる。 今日は本当に天気が良くて暖かいので、彼女もその暖かさに触れて眠くなってしまったのだろう。 僕は彼女にかかっている布団をかけ直す。 「まだもう少し、寝てていいからね。ゆっくりおやすみ」 言いながら、僕は彼女の髪を梳いた。 すると唐突に、僕の左目から、何かがつーっと流れ落ちていった。 「あ……れ……?」 本当に突然流れてきたものだから、何が流れてきたかよく分からなかったので、人差し指を目じりの水に添わせ掬い取ると、その水を一口舐める。 「しょっぱい……」 僕の目から流れ落ちてきたモノは、涙だった。 それにしても、何で涙なんて……。 いや、本当は理由なんてとっくに分かっている。 分かっている、というよりは、今まで気づかないようにしていた、の間違いかもしれないが。 僕の中には、ずっと前から渦巻いていた気持ちがあった。 “何で。 何で、彼女なんだろう。 何で彼女が、不治の病にかからなければいけないのだろう。 彼女はただ普通に生きて、普通に日々を過ごしていただけなのに。 彼女が何をしたっていうんだ。 ねえ、神様。 答えてよ……。” そんな、気持ち。 誰も答えてくれない、誰にも気づいてもらえない、もちろん神様にだって届きはしない、そんな気持ちが。
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