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それでも観光旅行にはなる。
なんせ彼女について回るだけで、僕の知らない今の地上の暮らしを見ることが出来るんだから、これも立派な観光旅行のはず。
僕は彼女を探そうと、早速歩き始める。
彼女の居場所は大体分かっている。
事前に天界の地上に詳しい天使達から情報収集してたから。
神様は地上や彼女に干渉するなとは言ったけど、彼女の居場所を調べてはいけませんなんて言ってないしね。
そもそも調べただけじゃ干渉にならないと思って、彼女が生まれ変わる度に、彼女の位置情報が僕に回ってくるように予め手配しておいたのだ。
僕ってあったまいい~!!
そうこうしてるうちに、僕は彼女の住む地域へとたどり着く。
彼女は今11歳のはず。
そして今日は平日なので、真面目な子であれば学校に通っているはずだ。
僕は調べてもらった情報を頼りに、彼女の通う学校へと向かう。
すると道中に、でっかい桜の木が生えていた。
枝には綺麗なピンクの桜の花が一面に咲いている。
「わぁ~、きれいだ」
その大きな桜の木を見ていたら、何だか僕と彼女の初めての出会いの思い出が蘇ってきた。
あの時も、こんな風に立派でとても大きい木の下で会ったんだ。
季節は違うけど、今でもハッキリと覚えている。昨日の事のように。
どれだけ待っただろうか。
彼女が生まれ変わってから、死んで、生まれ変わり、死んで、を繰り返してもう今回で4回目の人生。
前回会った時はまだ小学校に入学したばかりで、すごく幼かった。
あれから5年経つ今日という日を、どれだけ待ち望んでいただろう。
“待つ”という事には何年たっても慣れない。
彼女に話したいことはたくさんある。
彼女としたいこともたくさんある。
前回の彼女の人生では惜しいところまでいったんだ。
彼女は僕の顔に見覚えがあると言ってくれた。
前世での記憶を思い出しかけたんだ。
絶対に無理だと思っていたけど、アプローチの仕方次第では思い出せる可能性が出てきた。
だから、今回こそは……。
待っていて、時音。
もうすぐ、君に会いに行くから。
もし今回がダメでも、次こそは……。
僕のせいで運命の輪から外れてしまった君を、必ず救い出してみせる。
それが、僕が彼女にできる唯一の罪滅ぼしだから。
だから、待っていて。
何度時が巡っても、僕は君を愛しているから。
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