1人が本棚に入れています
本棚に追加
子供の様子を見に兄の家に行った時、初めて兄の恋人に会った。優しくて大人しそうな人だと思った。子供の事も面倒を見てくれているらしい。
それを知った私は内心とてもホッとした。彼女がいれば私が姪の面倒を見る必要も無い。確かに兄の事も姪の事も心配だが、私には私の生活がある。姪の世話から解放されるのを、心から嬉しく思っていた。私は時々自分でも嫌になるくらい浅ましい人間だ。
兄の恋人はそんな私とは対照的に、慈しみ深く姪の世話をしていた。赤ん坊が突然泣き出すなど当然の事だと私も分かっている。それでも煩わしく感じられるのだ。後に産んだ自分の子供の泣き声も煩わしかったのだから、私はきっと薄情な酷い人間なのだろう。それが彼女は嫌な顔一つせず、あまつさえ笑みを浮かべて姪の面倒を見ているのだ。女神か菩薩の生まれ変わりなのだろうか。
彼女が現れてから、私は兄の家に行く回数が目に見えて減った。彼女が兄の側にいるなら、私は必要無い。兄も姪も嫌いではないが、頻繁に会いに行かなくていい生活は自由を手に入れられたようで幸福であった。
そして彼女と出会ってから数年後、兄が結婚すると言った時、私はてっきり前述の彼女と結婚するのだと思ったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!