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兄が再婚を宣言した後、兄の家に行くとまだ彼女はそこにいた。何故なのか分からないが、私は彼女を問い詰めた。兄の再婚を知っているのかと。
彼女は兄が再婚する事を知っていた。平然とそう言ったのだ。私には理解出来なかった。何故彼女は怒らないのだ?兄に裏切られたのではないのか?貴女はこんなに兄に献身的だったのに?
私の疑問に彼女は幽鬼のような笑顔を浮かべてとんでもない綺麗事を言ってのけた。
「愛とは見返りを求めないものですよ」
私は笑うしかなかった。あまりにも滑稽だ、愚かだ。だってそうだろう。この世で綺麗事が罷り通る場所などそうそうありはしない。そんな事はありはしない。
私は侮蔑の笑みを浮かべ、こう言った。
「それじゃあ、どこか私達の知らないところでお幸せに」
我ながら性格が悪い。しかし、彼女は笑ってありがとうと言った。
これが私と彼女の別れだった。
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