白骨に思う

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兄はある意味誠実な人間であったのだろう。彼女を愛せないという己の心に正直で、誠実だった。そう思って兄が燃えている証の白煙を見ようとした。しかし煙の出ている煙突が減っていて兄の焼却が終わったのだと知った。 骨を拾いに行かなければならない。彼女が拾うことのない兄の骨。年老いてボロボロだけどになっているであろう。掴んだ途端に崩れ出すかもしれない。 ふと、彼女が今日骨を拾う人はどのような人なのか気になった。彼女は幸せだったと言っていた。ならば、大切な人なのだろう。 彼女にした質問を自分に投げかけてみる。私の人生は幸せか?答えは分からない。この年まで大過なく生きて来られたこと、家族がいる事など幸せだと思える要素もあれば、そうでは無い要素もある。 私は答えを出さないまま、兄の骨を拾った。箸で強く掴むと、ボロボロと崩れて骨壷に入れる事が出来ない。優しくゆっくりと骨壷に運んだ。人間の全身がこんなに小さい骨壷に入るのかと不安に思っていたが杞憂に終わった。 小さな骨壷は墓に入れられず、未だに兄の家に置いてある。それを見る度に彼女を、あの問いを思い出す。 幸せか、その質問に答えられず私は最期を迎えた。今の際、取り囲んだ家族を見てまあまあ幸せだっただろうと思えるまで、十年の月日が流れていた。
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