骨の爆ぜる音

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骨の爆ぜる音

夫の火葬に行くと、とても懐かしい人に会った。その人はかつて私が愛した人の妹で、あの人に会わなくなって以来、彼女にも会っていなかった。彼女とは特に関わりも無かったので当然と言えば当然であるのだが。 彼女の香りを見るとーと言ってもお互い随分年を取ってしまって一見しても分からないのだがー少々申し訳ない気持ちになってしまう。 昔、彼女が尋ねた。「これでいいのか」と。勿論良かった。私は彼の事を愛していたから、彼が幸せならばなんだって良かったのだ。きっと私と結婚していたら、毎日泣いて過ごしていただろう。別れ話の時、あんなに泣いていたのだから。 泣きながら「ごめんなさい。僕は貴女に返礼しか出来ない」と言う彼を見て、この人は私の事を永遠に愛してくれないし、幸せにはなれないと分かった。でもそれを説明するのは面倒で私は昔、読んだ物語のヒロインのセリフで誤魔化した。 「愛とは見返りを求めないものですよ」 何処か不満げな彼女の顔から目を背け、去った私は何十年も彼女に会わなかった。 私は何が何でも彼を手に入れるという覚悟が無く い、その程度の女だというだけの話である。
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