骨は肉に包まれて

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骨は肉に包まれて

清々しい秋晴れの空に向かって煙を吐き出す煙突が三本あった。その内煙が出ているのは一本だけなので、見るべき場所は分かり易い。そんな風に、ぼんやりと眺めながらお茶を飲んでいた私は兄の事を思い出していた。 私にとっては優しくていい兄であったが、義姉は優柔不断だの文句を言っていた。そう、兄は優しいが、時として残酷に感じられる時もあった。 兄の事は好きだが、時々軽蔑するような出来事もあった。特に、兄が最初の妻を亡くし、再婚する直前の事は今でも胸の奥に鉛を入れたかのように感じられる。 空高く上る白煙はもう暫く続くだろう、と座っていた椅子から立ち上がりトイレへ向かう。その途中ですれ違った女性に奇妙な懐かしさを感じた。顔は全く知らないその人は、どこかの記憶に面影があるように思えた。 誰だろうかと考えてみるものの、彼女がどこの誰だか思い出せない。モヤモヤとした感情を持ったまま、元の場所に戻るとまだ煙が上がっていた。 その時、先程すれ違った彼女が誰か思い出した。分からなくて当然なくらい、お互いに時間が流れていたのだ。あの頃の顔を思い出しても、面影を探し出せるか怪しかった。 彼女は私が兄の思い出として思い出した女性ー兄の恋人だった女性だ。
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