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猿田氏との軽食を終えた青年は、どっと疲労が蓄積した体を休めるべく、下宿先のアパートへ足早に帰りました。広さ4畳半のぼろアパートながら、風呂の広さは2人はゆうにくつろぐことができる程であるため、青年はその点を大変気に入り契約しました。
丹精込めて浴槽を掃除し、蛇口をひねりお湯を湯船に溜めます。お湯が溜まる様子を眺めながらキャンディを舐める時間が、青年にとって至福の時なのだそうです。お湯が溜まると、本来ならば何か特別な日にしか入れないヒノキの入浴剤を今夜は奮発します。
ヒノキの芳醇な香りを両方の鼻で目一杯吸い込み、全身に行き渡らせます。そして、湯に体を沈めていきます。身体中の穴という穴からヒノキの湯が染み渡り、青年の血液を温め、壮大なるリラクゼーション効果を彼にもたらします。すーっと1日の疲れが癒されていきます。日本人に生まれてよかったと、青年は心の底から思いました。そして、ふと田舎の両親の顔が浮かびました。
青年は、お湯の中に頭を丸ごと沈めて、目を閉じて両親への感謝の気持ちを、言葉を唱えました。そのような心持ちにさせるほどの効力をヒノキの湯は持っていたのです。
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