あなたという人

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…。 誰にも言わない…? しばらくの沈黙の後にあなたは恐る恐る言ったね。 誰にも言わないよ。言うもんか。 僕にしか見せてくれなかった 君の特別な一面をどうして他の人に話すのさ。 話すもんか。 そっか…。 彼女はぽそっと呟いてから ちょっと肩借りていい…? そう一言だけ言った 狭く、なで肩な僕の肩にあなたの 小さな頭がぽふっと寄り添った。 タバコの匂いが染み付いたコートの上に 君の頭が寄りかかる。 たった10秒だけだった。 あなたが僕に甘えたのはたった10秒だけだった。 僕はあなたに甘え友人として支えてもらった年月はとても長い。 なのにあなたはたった10秒だけだった。 でもその10秒は今までの何よりも価値があり 何よりも幸せな10秒だった。 21年の人生の中で彼女が異性に唯一心の底から弱さを見せた10秒だった。 あの日に戻りたいとは思わない。 もう一度あればいいとは思わない。 心の中で生き続ける10秒でいい。 純粋でシンプルが故に、劣化も美化もされない。 一生僕の心に生きる10秒。 その日の夜はしんしんとすぎた。 あれから僕は毎晩あの10秒を思い出す。 思い出すたびに目頭が熱くなる。 あなたがくれた10秒が僕の中で一生生き続ける。 何にも変えられない特別な記憶。 あの日のあなたを思い出し私はまたより一層 あなたを好きになる。 あなたはもう何も思っていないのだろうか。 怖くて聞けないけど 僕は今幸せです。 あなたがくれた優しさが、 あなたが見せてくれた弱さが 僕の胸を、 今日も締め付ける。 あなたを好きになれてよかった
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