ヒーローショー

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「ぐ、ぐるもん。ジャンクは、絶対ぐる、もん。どこかで戦ってるから、今はごないだげだもんっ! お前なんかジャンクのアンティークキックですぐにやられるんだ!」  震える声の少年は服の袖で涙を拭う。秋葉はトイレで戦っているとは口が裂けても言えなかった。そのトイレで戦っている前島はまだ来ない。これ以上前島を待つのは精神的にも限界だった。秋葉はショーを中断して事情を説明して謝るべきだと思ったが、子供たちの夢を壊すことになると脳裏で過ぎり、行動に移せなかった。  すると、秋葉の背後にいたムクロ怪人こと筒野が、秋葉の前に歩み出た。 「ふ、ふはははぁ! 無駄だ! 無駄だ! どれだけ呼ぼうがジャンクは来ない! ジャンクは私がある場所に閉じ込めた!」  またしてもアドリブで乗り切るつもりらしい。それとなくジャンクが来れない理由を匂わせているのが、追い詰められているようで痛々しい。子供たちは泣き叫んだ。正義のヒーローはムクロ怪人の手で身動きが取れず、ここには来ない。世界はムクロ怪人のものになりました。めでたしめでたし。というわけにいくはずがない。どこにヒーローショーで、敵が勝利する結末があるのだ! これでは子供にトラウマを植えつけるだけの本当の悪党だ。 「このムクロ怪人を止められるものは、この世界にはもういない。そう、どこにもいないっ!」     
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