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立川は、他のメーカーの缶ビールも全て綺麗に並べていた。 涼しい季節になったし冷蔵棚の近くではなくとも汗をかくほどの気温ではない。だが、動いていると暑くなるのか、立川はたびたびハンカチで顔の汗を拭いていた。 そんな立川の後ろを買い物カートを押しながら年配の女性が通ろうとして足を止める。 それからゆっくりと陳列棚を見上げていた。 女性は独り言のように呟く。 「色んなビールがあるのねー」 「いらっしゃいませ。そうですね。最近は種類も豊富ですよね?」 と、立川が応えた。 「うちの主人はね、苦いのがダメなの。飲みやすくないと機嫌が悪くなるのよ。だから、いつもトサヒに決めてんの」 「そうですね?飲みやすさで言うとトサヒさんのビールですかねー」 ライバル社のビールではあるが、女性に同調している立川。 「でしょ? あーいつも飲んでるトサヒビールがないわね。売り切れかしら?」 「あーホントですね。裏を探してきますので少々お待ちくださいね」 立川はぎこちなく口角を上げて見せてから女性客に頭を下げた。 それから、いきなり方向転換してダッシュしようとした立川。そのとき、たまたま通りかかった中年の女性客のカートに立川は、ぶつかってしまう。 「あっ、申し訳ございません!」 平謝りする立川が頭を下げた際、突き出された立川のお尻が先ほど缶ビールを陳列していた棚に当たる。 「うわっ! 危ない」 揺れた棚からは、缶ビールが次々と床へ落ちていき派手な音を立てた。へこんだり中身が溢れ出た缶ビール。 大変っ! 焦って駆けつけようとする翼の腕を目黒は後ろへ引っ張った。 「ち、チーム長?!」 振り返ると目黒が「まだいくな」というように首を横に振った。
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