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「あんたさ、余計なことしてくれなくていいから。ちょっと話いい?」
「は、はい。申し訳ありません」
店長に呼ばれてバックルームへいく立川。大きな店長に従いついていく立川の背中は、かわいそうに思えるほど小さかった。
「いいんですか?助けなくて」
焦りまくる翼に対し、平然としている目黒。
「ああ。自分に起きたことを自分で解決出来ないような奴は、いつまでたってもヒヨコのままだ」
「でも、また取り引きが縮小されるかもしれませんよ?」
受注件数が減ることは、札幌支社を閉鎖に追い込んでしまう元になる。
「それを解決出来なければ、奴がトントリーホールディングスの営業社員でいる意味がない」
「……はあ」
わかったようなわからないような表情を見せた翼は心配そうに立川が歩いて行った方向を見つめた。
「おい、札幌支社に帰るぞ」
「え?」
「島根さんに話を聞きたいんだ」
「島根さんにですか?」
「ああ。さっきので、奴があんなに鈍臭い理由が見えて来た気がする」
「鈍臭いとかヒドイですよ。彼は一生懸命でしたよ。ちゃんと、お客様もかばってたし」
「そんなことは営業でなくても人として当たり前にすることだろ」
スタスタと出口に向かい歩いていく目黒。
店を出て、翼と目黒は駐車場に停めていた営業車に乗りこんだ。
シートベルトを締めた翼を窺うように見て、目黒は急に吹き出すように笑う。
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