Christmas イブの夜

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 目が座っている北斗が、ズイっと迫ってきて寸前のところで横に反れた。北斗の唇が私の頬におしつけられる。  ゾクゾクゾク……。 「バカ!! 冗談は顔だけにしろよ! お前、なに血迷ってんだよ!」 「ユキ…、汗臭い」 「るっせえぇぇぇ、早くこの手を外せよ!」  クンクンと耳と首筋の匂いを嗅いでいる北斗からは、高級そうな石鹸の香りと北斗の汗の匂いが僅かに感じられた。  その瞬間。グワーッと胸が苦しくなる。得体の知れない痛みが混じり、喉の奥から奇妙な嗚咽が漏れた。すると…。 「…でも、この匂い嫌いじゃないぜ」  耳の傍で吐息混じりに囁かれて、鳥肌が全身を襲う。腰が抜けそうになり、歯がガタガタと鳴り出した。 「北斗! これ以上変なことしたら、マジぶっ殺す!!」  唾を飛ばしながら精一杯の気合で叫んだ。手首を抑えていた力が抜けて、自由になる。見ると北斗は炬燵に向かって泣きながらチキンを食べていた。  逃げ出す子犬みたいに這いながら台所まで逃げ、籠の中に置いてあった包丁を手に持って身構える。あんな自暴自棄な失恋野郎に私の純潔を弄ばれるなんて、あってはならないことだ! 「ごめん。お前もやっぱり女なんだなって思ったら、ムラムラした」 「そーゆーこと、言うな! 絶交されたいのか!」 「うんん。絶交はいやだ。…これ食ったら、帰る」
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