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「ユキ…、凍えそうだよぉ」
足にまとわりつく北斗の手を踏んづけた。でも奴は懲りずに、すぐに私の足首を掴もうとする。
「超、うぜぇぇ!」
「…ユキって、本当に男みたい」
ボソリと、つぶやかれる。げんなりした。
「なにを今更!!」
「でもさ、俺。本当は最初からずっとユキのことが…」
言い終わる前に、北斗の口に手で掴んだケーキを押し込んだ。北斗は私の指を齧る。
「…いって!!」
怯んだ隙に、がばりと起き上がった北斗にまたしてもマウントをとられた。ケーキまみれの唇が私の唇を襲う。紙一重で後ろに逃げ、代わりに頭突きを鼻っ面にお見舞いしてやった。
「ううぅぅぅ!」と言う嗚咽と、赤い鮮血が同時に私の感覚器官に飛び込んでくる。炬燵布団が悲劇の現場と化していくのを見つめながら、怒りが昇り龍のごとく競り上がってきた。
私は脱兎のごとく階段を駆け上がり自分の部屋に逃げ込んで、鍵をかけた。中古で買ったこの家には、個室ごとに鍵付きのドアが設置されていて、初めて鍵付きで良かったと心底ホッとしながらベッドに潜り込んだ。枕に顔を埋めながら、ひとしきり北斗とミカちゃんとママへの恨み言を叫ぶ。
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