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いつの間にか私は炬燵猫と共に、炬燵で寝ていた。目が覚めると、テーブルの上に並んだチキンやケーキらしきものにラップがかけられている。喉が渇いて、のろのろと炬燵から出ると、ふらつきながらも台所に向かった。水道水をコップに注いで、あおるようにごくごくと飲む。時々苦しくなって、息継ぎをするように休みを挟みながら、二杯の水を飲に干した。胃に水が溜まるけれど、まだ心は乾いたままだ。
ぼんやりとカーテンの向こう側を見ると、白い影が灰色の衣を纏って立っている。窓際に駆け寄って結露している窓ガラスを手で拭いてみると、真っ白い銀世界が…。陽が昇り出した街が、白く輝き出すところだった。
「うわぁぁぁ! 雪だ! 雪が積もってるよ!」
興奮して振り返ると、そこに居たのは丸まって寝ているダイフクだけ…。また、昨夜の寂しさに包まれそうになって、私は窓の鍵を開けて大きくひらいた。冷たい風にさらされながらも、身体中に雪の香りを吸い込むと少しだけ気持ちが楽になる。
こんなに綺麗な朝を分かち合う人がいないなんて…。部屋に籠ってゲームばっかりして、いつもひとりがラクだなんて思ってたけど。当たり前にある人の気配が消えた途端に、寂しくて死にそうになるなんて…。なんだ、結局私はただの寂しがり屋だったというわけだ。
「ダイフク! 雪だぞ! ほら、こっちにおいでよ!」
いくら声をかけても、猫は炬燵から離れようとはしなかった。しょうがない、猫というのはそういう生き物なのだ。ダイフクに罪はない。そう思ったら、昨夜の北斗の言動に対しても新たなる見解を得た…、気がした。
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