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あいつ…、どうしたんだろう?
声は案外元気そうだったから、ドタキャンかな。
まさか、フラれて強がっているとか?
バイト先で知り合った二歳上のミカちゃんという彼女と私は、一度も面識がない。ただ、私という親友がいるということは知っているそうだ。性別は伏せられている。異性の友情は成立するのしないのと、ほんの少し前にも熱く議論を交わしたところだ。北斗は成立する派で、私は中立派。北斗曰く、ミカちゃんは成立しない派にはっきりと分かれていた、とかいないとか。
FPS(タクティカルシューター)というゲームにおいて、プレイヤーの性別は男に偏っているため、ゲームの中で出会い一緒に拳銃やライフルをぶっ放している友達と言えば、自動的に男という分類に区別されるのだという。そんなゲーム内に置いて私は数少ない女なわけだが、声も低めだし顔もパパに似て眉毛が凛々しいせいか、中性的だと良く言われる。愛想よく沢山の女子と会話できるタイプじゃなく、むしろゲームオタクしか好まないマニアックなゲームが大好物なせいで、話が合うのは狭く深いストライクゾーンに生息している同類しかいない。そんな中でたまたま偶然ゲーム内で出会い、同じ中学に通ういっこ上の黒沢 北斗とは、ごくごく自然な流れで良く遊ぶようになった。あれは中二の正月休みの頃からだ。きっかけは確か…。
シューーー! 台所からヤカンの声が上がる。炬燵から立ち上がって、対面式キッチンの向こう側に回り込んで火を消した。足下ではダイフクがポリポリとドライフードを食べている。彼の尻尾を踏まないようにカップ麺が置いてある炬燵まで、ヤカンを持って行った。鍋掴みがないと熱くて死にそうだ。
ピンポーン
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