犬飼

1/1

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ

犬飼

別に、最初から嫌っていたわけじゃない。 というか今だって別に嫌ってはいない。ぶっきらぼうなのは素だ。 距離をとってるのは、あいつの方だ。 もともと俺の役どころは寡黙なモンロー主義的一匹狼なキャラクターだった。 それが、桃太郎の村が襲われると路線変更されたときに、未熟な状態とされるあいつ1人では逃げ出すのに無理があるということで俺が助け出す役になった。その流れだとモンロー主義ではスジが通らないだろう?連れだって旅立つのに会話が発生しないのも話を広げるのが難しいという発想から、義に厚い熱血漢なんて、オレとは随分かけ離れたキャラになってしまった。 まあ、それはいい。仕事なんだからどんな役だってやるさ。 オレが許せないと思ったのは、あいつの卑屈な態度だ。 血まみれのきび団子を差し出したとき、あいつはどんな態度を取るかと思ってあえて言ってやったんだ。「コレ食うのかよ」って。 そしたら、あいつなんて言ったと思う? 「ゴメン、やっぱいやだよね」って。あげくに団子ひっこめやがった! それじゃ!話が!つながんねえだろ! 大体、主人たるものもっと毅然としているべきだ。 手下には命令すればいいんだよ。「あれをしろ、これをしろ、それをくえ、あいつを殺せ」ってな。それをなに気を使ってんだかああですよねこうですよねと太鼓持ちみたいな真似しやがって。あげくこっちがちょっと吠えりゃビク付いて手をひっこめやがる。 あんな事してる限り、主人とは認められないね。ちゃんと手綱を取るべきだ。主人公なんだから。 その点、猿のやつはよくわかってる。あいつも言ってたぜ、優しさもいいけど将のすることじゃないってね。 …きび団子くわした人間には、責任とってもらわねえといけねえんだよ。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加