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温羅伝
難攻不落の魔城とて、神騎の威光にもはや風前のともし火。
なれど鬼将は未だ健在。城砦によりて睥睨する邪気にさしもの三臣も怯む中、ただ一人尊のみが裂帛の気焔を吐いて正義の所在を知らしめる。
「建布都神よ照覧あれ!邪悪の化身よ!我が雷受けてみよ!」
「片腹痛い!倭国の弱弓が我が幻術を破れるか!」
神弓の唸るや刹那、迅雷の如き光条が鬼将に迫る。
しかし如何なる奸智によるものか。大気を震わし放たれた矢は宙に浮いた大岩に遮られ、雷鳴の如き嘲笑が響きわたる。
ああしかし見よ!光は二条、一矢は大岩に遮られるも対の矢は神速を持って温羅に迫…
「はい、カットカットォーーーーーーー!」
「えぇー、またかよお…」
「はいおつかれぇー。サルー、飯にしよーぜ」
「今日はなによゥ」
「あー、寝落ちだねぇこれは」
「まっじかよクライマックスだぞ」
漆黒の闇夜に白熱灯が照らされ、舞台の全容が露わになる。
充満していた死地の緊張感は瞬時に胡散霧消し、役を演じていた全員の顔が一気に弛緩した。
「また寝落ちぃー?ちょっとこの演出、読者に向いてないんじゃないのぉ?」
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