温羅伝

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「またまたぁ、知ってるんすよぉ?こないだ鬼っ子パブで酒呑さんとやらかしたって。そのあとどうなったんですかぁ?」 「ちょっちょっちょしー!どこでそれを…いや今日はまずいのよ。久々に出番一緒のところで終わったからって、奥さん待ってるからさあ」 「普段ツンケンしてるくせに、奥さん可愛いとこあるっすねぇ」 「ごめんね!この埋め合わせは今度!」 「絶対っすよー!」 ペコペコと頭を下げながら巨体を小さくして恐怖の化身がスタジオの出口に向かう。壁際に立って待っていたのは奥さんの阿曽姫さんだ。素っ気ない素振りをしているけど、顔には隠し切れない微笑みが溢れている。旦那さんにはあんな可愛い笑顔見せるんだよなぁ。文字どおりの鬼嫁なのに。 「…ふぅ。お、犬飼君お疲れ様。ご飯でも行かない?」 「あ、猿と行く約束してんで。サーセン」 「いつもながらの塩対応だねぇ」 「…オレ、誰にでも尻尾振るわけじゃないんで。おつかれっした」 スマホから目を離すでもなく、犬飼君は出口に向かっていった。 彼はいっつもいっつも僕に素っ気ない。飯で忠誠買おうという魂胆が気に入らないそうだ。 きび団子を食べるシーンで僕を見つめる彼の目は、物凄く怖い。 「あんにゃろう、プライベートでもきび団子食わせてやろうかな」 「いやあ勘弁してやってくださいよ」 「おう、猿森君お疲れ」     
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