吉備津彦尊

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鬼の悪さの噂を聞きつけて平穏無事のうちに旅立つはずだった僕の村は、キャッチーな導入にしようという路線変更により鬼たちに殲滅されることになった。僕の役どころは正義の味方から一気に復讐の鬼に大変身だ。なぶり殺しになるおじいさんおばあさんには悪いことをしたと思うけど、謝ったら苦笑いしながら「まあ仕方ないよね、読んでもらわんと」と言ってくれた。きび団子の包みがおばあさんの鮮血にまみれるのは、ちょっとやりすぎだった気がする。 犬飼君との関係が微妙になったのもそれが発端だ。 「…これ、食べるんすか」 そうつぶやいた時の彼の軽蔑を隠そうともしない目線は、時折夢に出てくる。 劇中の彼は熱血漢を演じているけど、素に帰るとシベリア大氷原だ。 猿森君はそのあたりも理解してくれて、 「演出ですから、しょうがないですよね」 と食べてくれたけど、犬飼くんとソフトBL展開を依頼した時は額に青筋が立った。 「多分、男子中学生はそういうの嫌なんじゃないですかね」 「仕方ないんだ、これは僕の演出じゃなくて本筋にある展開だから…。古代は男色も日常茶飯事ってのを言い訳に、女子読者も狙ってんるんだよこの作者」 結局、接吻程度までなら、と受け入れてくれたけど。あれ以来猿森君からも深入りを避けるように若干距離を置かれている気がする。 ちなみに、そのアイディアの発案は雉ちゃんで、作者云々は全部僕の口からで任せだ。犬飼君はまんざらでも無さそうだったけど、それは気づいていないこととする。 雉ちゃんの衣装がどんどん際どくなっていったのも、てこ入れの一端だ。     
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