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抱かれてはいない。けれどあの状況を目にすれば瞬時に何があったかは察するはずだ。こんな尋問みたいなマネしなくたっていいのに。
「クスリのせいです」
「そうだな」
久慈は視線を合わせず煙草に火をつけた。ベッドの脇で腕を組んだまま、煙草を深く吸い、長く煙を吐く。
「水倉さんのこと、あのままで良かったんですか」
「良いも何も。ここで何もできないだろ。もともとは劉の親父に会いにきたんだ。何を心配している?」
「後で、何か大変なことになるんじゃないかなって……」
「あの男は別件の重要参考人なんだ。刑事部に持っていかれるわけにいかないから、牽制だけした。今は泳がせておくしかない」
胸の奥で、もやもやが燻っている。彼が今後どのような行動に出るのか。一抹の不安が影を落とす。
久慈は、吸い始めの煙草を灰皿に押し込んだ。
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