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「先週ホテルに行ったじゃないか」
先週もつけていたんだな。確かに水倉とビジネスホテルには入ったが、俺は泊まっていない。ウリ専らしい男娼が部屋で待っているらしいことは知っていたが。
一体何のつもりなんだ。こんな相手に一瞬でも気持ちよくなったなんて、自己嫌悪にもほどがある。
「もういいでしょう。離してください」
「まだだ」
腕を掴まれた。一刻も早くこの場を去りたいのに、その力強さから逃れられない。すると耳元で男が囁く。
「水倉になんで近づいてるのか知らんが、いい加減にしろ。あいつの裏をとる気かもしれないが、素人じゃ無理だ」
「は? 何を言って」
「世襲議員でもない、コネも資産もない水倉が一体どんな手を使って与党の中枢に根を生やしたのか、知りたくないか」
この男――。
「お前が水倉に近づいている理由を教えろ。そうしたら水倉の秘密を教えてやる」
再び乱暴に俺の顎をとった。睨みつけると、口に笑みを浮かべる。
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